厳しい視線に気が付かないでいられるのは幸福な証拠

別に群れるのが駄目って言ってるんじゃないんです。仲がいい人は、私にだっていますし。
ただ度を越した『なんでも一緒』は嫌だと言いたいだけなんです。
それは誰かがいないと何にも出来ないのと一緒だと。
そんななにも出来ない奴に何かやってやるのは煩わしいから嫌だと。
そういう奴は甘えと執着で縛ろうとするから嫌いなんだと。
他人のために自分が虐げられるなんて我慢ならないと。


ただそれが言いたいだけ。





それだけ。

いつでも一緒に行動したがる人が苦手なのです。
常にその人だけ、というのは物凄く不自由です。
中学生や高校生までなら、まあ何となくＯＫ。思春期の子ってのは、そういうもんでしょうから。
でもね、高校を卒業してもまだ連れションに誘われた時には流石にどうしていいか分からなかったことがあります。
トイレまで一緒に行く必要は無いだろう、特に、こっちは催していないのだし。
まあ一緒にトイレって言うのはかなりショッキングだったんだけど。
最近またちょっとどうなの、みたいなことがありました。
私は今コンビニでバイトをしているのです。
まあちょっとのっぴきならない事情で(いつもの親子喧嘩)留学したいからとか嘘扱いて働かせてもらってるんだけれど、それを中学の時の知人が目撃したようなのですね。
母親同士が知り合いだから多分お互いの大まかな近況なんかは知っているのです。私の場合、人の顔と名前は覚えるのを随分前に諦めたので彼女の名前こそ母親が使うから知っているとはいえ、顔なんて全く覚えていないんですね。
でも彼女は覚えていた。
で、私が働いているからとうちのコンビニで働きたいとか言っているそうです。
その考え方が自分には無くて、久しぶりにこういう人間との邂逅に正直ビビリました。
バイトがしたいんだったら自分で探せばいいじゃないか。何しろうちのコンビニは今求人していないのです。募集してないのです。他にもあるだろ、この辺には。あそことか向こうとか。コンビニだけじゃない。薬局だってケーキ屋だって今日びアルバイトを募集している。
やる気があるなら何処だってある。でも、彼女は知り合いがいる所がいいと言う。
私は正直言って中学の頃の事を呼び戻したくないんですね。思い出したくないと思っている。それもかなり、強く。
だから知り合いが、それも中学だ高校だなんてのは本当は勘弁して欲しいのですね。
それに加えて彼女は群れる気質の人だという。困る。大いに困る。
一人で色々こなそうとしたがる私の癖は、今までちやほやされる事が無かったから自然に身に付いた気質だと思います。可愛がられるような性格でも容姿でもなかったからなのかな、と。(今も無い。ほしいともあんまり思わない)
常に人と一緒にいる人は、人から大事にされている人なんじゃないだろうか。人を通して自分をポジティブに捉えることが出来る人なのでしょう。
だからって、私の性格を捻じ曲げても彼女の鏡になるのは御免ですし。出来ればバイトで親しい人を作りたくないのもホンネの一つではあります。仕事に私情を持ち込んで良かったためしがない。オンとオフは分けていたい。もうこれ以上人との交流で悩みたくない。
人嫌いかと言われそうですが、不意の友情は暖めてきた物も簡単に壊してしまうことが有るのです。ましてや歩いて１分のコンビニ。家族とスレスレの交流なんて私は出来ない。
彼女の家も近いのです。親同士で仲がいいんです。私にとってこれほどタブーな人間も少ないと思うんだけれど。

それでも私は今彼女のためにメールアドレスを教えようとしている。

あまり関わらないような時間帯にシフトを入れるよう考えている。

またテリトリーに引っ付き蟲を引き込んでいる。

昔、精神科に言っていた時に医者から『そういう人が寄ってくる気質が有る』といわれてかなり凹んだことがあります。
でも間違ってない。私は自分で自分の脅威になりうる人を呼び込んでいるんだろう。
思えばそんな人にずっと足蹴にされる日々だったわけだし。
この際上手く共生できる努力が出来るチャンスだと思った方がいいのでしょうか。それが仮令コバンザメのように侍り褒めに褒め謙遜し道を譲り続けるようだったとしても？
私が誰も縛りたくないのは誰にも縛られたくないからで。特に群れたがる人々は私が自発的に何か行動を起こせば必ず否定してくるので、それも恐れています。




四年制大学なんて意味が無い。

パソコンなんて勉強してもしょうがない。



自分が選んだ道を否定されるのは嫌だ。



本なんてつまらない。

借りた漫画面白くなかった。

こういう話嫌いなんだよね。



嗜好に文句を言われるのは嫌だ。



いいじゃん、やっといてよ。

私やりたくないからやんないの。

知らない、何とかしてよ。



他人の尻拭いはうんざり。




どうして一人で出来ないの。誰かと一緒じゃないと駄目なの。そうやってバイトも高校も大学も就職先も選ぶの。
多分、私が怯えているのは彼女じゃないんだろうな。
学校にもいる良く似た人とか、中学以来の腐れ縁のあの子とか。そういう人が皆この辺りの土着民であることが拙い具合にミックスされている。
昔から転校生は土着民に虐められるという設定なのです。
だから群れる気質の、といわれただけでこんなに考え込んでいるのかも。



そう。ただのトラウマなんだな。
馬鹿みたい。

馬鹿みたい。