全てが唯洩れている場所
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私は仏間に座っていた。
仏間にはいつもカーペットが敷いてあって、多分私が生まれたときよりも前からそこにずっとあって。でも今日はそこにカーペットは無かった。
私はその時、初めてその下の畳を見た。
サッシの外は白くて何も見えない。基本的には隣家の壁だとか適当に干してある洗濯物だとか見えるのに。
遠くで誰かが話しているような気がする。この家は人の出入りが激しくて、いつも人がいる。
目の前には祖父。
そしてもう一人、知らない誰か。
公家の遠縁にあたるだとかなんとか言っていた胡散臭い男性。
祖父はずっと私の膝を撫でている。
何かを言っていて、私はそれを聞いていて、「大きくなった」とか「こんなに小さかったのに」とか、生前から何度も言われてた事をまた何度か言われた。
それ以外のことは、覚えていない。
暫く雑談をして、時々沈黙して、外を眺めたりした。
不意に祖父が立ち上がる。
男も立ち上がった。
「ほんじゃあ、元気でな」
その一言だけが鮮明に聞こえた。
とてもはっきり、祖父は言った。
待って、行ったらやだと私は泣き叫ぶ。
おじいちゃんと叫んで泣いた。
立ち上がって追い縋ろうとしたのだけれど、追いつけなかった。
閉まっていたはずのサッシが開いていて、ふいと祖父はそこから外に出て、消えた。
廊下で、祖父が消えた場所で、外に向かって、おじいちゃんと呼んだつもりだったけど何だかよく分からない音になって、子供のように馬鹿みたいに泣いた。
不意に叔父が横に現れ言った。
「ライカ、どうしたの?」
「今おじいちゃんがいたの。いたけど行っちゃった」
目を真っ赤にした叔父は震える声で小さく、しかしはっきりと言った。
「おじいちゃんは死んじゃってもういないんだよ」
うん、知ってる。でも今、いたの。
それだけ言って、そこで目が覚めた。
布団の中で丸まりながら今見た夢を思い出す。
はっきり思い出せるのは断片的なもので、しかし今まで見たどの夢よりもリアルだった。
涙は止まる気配を見せない。
鼻を啜りながら、ようやく思い至る。
「行ってしまった、」
まだそこにいるような気がしていた、祖父の気配が。
何処にも無かった。
今日の本当の話。
自分は特に霊感がある方じゃないと思っていたので、夢も「なーんだいつもの夢か」とか思ってた。
祖父の家が夢に出てくることはよくある。思い出深いからかな。でも大概が、あと数分で爆発してしまうとかそういう設定で、みんな外に出てるのに一族の誰かが見つからなくて(それは父だったり祖母だったり)タイムリミットぎりぎりまで探している間に目が覚めるとか、そういうスリリングな展開を見せるんだけどさ。
おじいちゃんが出てきたときも死んだ人が現れたっていうより、私の記憶の中に残っているデータがロードされた、くらいに感じてて普通に会話をしてた。
大体誰だ横の『公家』さんはよお。笑
藤原のなんとかかんとかの血縁で、皇族とも縁があるんだとかなんとか、本当に胡散臭いこと言ってたからこれは俺の頭が大丈夫かとか愛想笑いしながら思った。
でも最後に「ほんじゃあ」って言われた時になんか急に物凄くヤバイ気がしたんだよね。葬式でも泣けなかったのに、夢で物凄い泣いて必死で引き止めた。起きても暫く涙が止まらなくて、本当に今、挨拶に来たのかもしれないと思うくらい夢には現実味があって。(まあ動転してたからだろうけどさ)
下手に記憶再生とかじゃなかっただけにね。
起き抜けに「行ってしまった」って自然に、ホントにゆった。言った本人が一番ビビッた。
もうじいちゃんが死んで一ヶ月経ったのか。
この一ヶ月、卒業とかそういうのの時もだけど、なんとなく伝わってるような感覚があって、まあ亡くなって間もないし実感無いだけだとあんまり気を使ってなかったんだけど。
なんだっけ、あれ、四十九日?はまだ先な気がする。
まだお骨も納められてないし。
なして今日だったのか。
卒業式は一週間前に終わったし、入社式は一日だし。
四十九日までに挨拶回りでもしてるのかね。死んでも律儀な人だ。
ビックリ不気味感動体験ですた。
仏間にはいつもカーペットが敷いてあって、多分私が生まれたときよりも前からそこにずっとあって。でも今日はそこにカーペットは無かった。
私はその時、初めてその下の畳を見た。
サッシの外は白くて何も見えない。基本的には隣家の壁だとか適当に干してある洗濯物だとか見えるのに。
遠くで誰かが話しているような気がする。この家は人の出入りが激しくて、いつも人がいる。
目の前には祖父。
そしてもう一人、知らない誰か。
公家の遠縁にあたるだとかなんとか言っていた胡散臭い男性。
祖父はずっと私の膝を撫でている。
何かを言っていて、私はそれを聞いていて、「大きくなった」とか「こんなに小さかったのに」とか、生前から何度も言われてた事をまた何度か言われた。
それ以外のことは、覚えていない。
暫く雑談をして、時々沈黙して、外を眺めたりした。
不意に祖父が立ち上がる。
男も立ち上がった。
「ほんじゃあ、元気でな」
その一言だけが鮮明に聞こえた。
とてもはっきり、祖父は言った。
待って、行ったらやだと私は泣き叫ぶ。
おじいちゃんと叫んで泣いた。
立ち上がって追い縋ろうとしたのだけれど、追いつけなかった。
閉まっていたはずのサッシが開いていて、ふいと祖父はそこから外に出て、消えた。
廊下で、祖父が消えた場所で、外に向かって、おじいちゃんと呼んだつもりだったけど何だかよく分からない音になって、子供のように馬鹿みたいに泣いた。
不意に叔父が横に現れ言った。
「ライカ、どうしたの?」
「今おじいちゃんがいたの。いたけど行っちゃった」
目を真っ赤にした叔父は震える声で小さく、しかしはっきりと言った。
「おじいちゃんは死んじゃってもういないんだよ」
うん、知ってる。でも今、いたの。
それだけ言って、そこで目が覚めた。
布団の中で丸まりながら今見た夢を思い出す。
はっきり思い出せるのは断片的なもので、しかし今まで見たどの夢よりもリアルだった。
涙は止まる気配を見せない。
鼻を啜りながら、ようやく思い至る。
「行ってしまった、」
まだそこにいるような気がしていた、祖父の気配が。
何処にも無かった。
今日の本当の話。
自分は特に霊感がある方じゃないと思っていたので、夢も「なーんだいつもの夢か」とか思ってた。
祖父の家が夢に出てくることはよくある。思い出深いからかな。でも大概が、あと数分で爆発してしまうとかそういう設定で、みんな外に出てるのに一族の誰かが見つからなくて(それは父だったり祖母だったり)タイムリミットぎりぎりまで探している間に目が覚めるとか、そういうスリリングな展開を見せるんだけどさ。
おじいちゃんが出てきたときも死んだ人が現れたっていうより、私の記憶の中に残っているデータがロードされた、くらいに感じてて普通に会話をしてた。
大体誰だ横の『公家』さんはよお。笑
藤原のなんとかかんとかの血縁で、皇族とも縁があるんだとかなんとか、本当に胡散臭いこと言ってたからこれは俺の頭が大丈夫かとか愛想笑いしながら思った。
でも最後に「ほんじゃあ」って言われた時になんか急に物凄くヤバイ気がしたんだよね。葬式でも泣けなかったのに、夢で物凄い泣いて必死で引き止めた。起きても暫く涙が止まらなくて、本当に今、挨拶に来たのかもしれないと思うくらい夢には現実味があって。(まあ動転してたからだろうけどさ)
下手に記憶再生とかじゃなかっただけにね。
起き抜けに「行ってしまった」って自然に、ホントにゆった。言った本人が一番ビビッた。
もうじいちゃんが死んで一ヶ月経ったのか。
この一ヶ月、卒業とかそういうのの時もだけど、なんとなく伝わってるような感覚があって、まあ亡くなって間もないし実感無いだけだとあんまり気を使ってなかったんだけど。
なんだっけ、あれ、四十九日?はまだ先な気がする。
まだお骨も納められてないし。
なして今日だったのか。
卒業式は一週間前に終わったし、入社式は一日だし。
四十九日までに挨拶回りでもしてるのかね。死んでも律儀な人だ。
ビックリ
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